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第3章-3 問題の多い部下は組織全体の「問題」を象徴しているかもしれません
「問題のしわよせは、いつも弱い者が引き受ける」
子どもが不登校になったとき、親はその原因を子に求めがちですが、夫婦の危機というもっと大きな問題を親が抱えていることがあります。しかし、口もきかなかった夫婦が、子どもの不登校をきっかけに会話をするようになり、子が突然、学校に行き出すというケースがあるのです。
すると、カウンセラーはこう考えます。
「家族全体の関係を修復させるために、子どもが登校拒否児になってくれた」と。
子どもは無意識に親のために行動しました。子という弱い存在が、家族のより重大な問題を引き受け、不登校というかたちをとり、隠れていた、無視してきた、気づけなかった大きな問題を顕在化させ解決しようとしたのです。
ビジネスと縁遠い話をしたようですが、実は職場においても同じ構造を持った問題が頻発しています。
前述した挿話に登場した父親を部長、母親を課長、子を若手社員と置き換えて考えてみて下さい。
部長と課長の仲が、あまりよくない。そういった職場で、部下のモチベーションが低かったり、うつ病の社員が出たり、若手社員の離職率が高かったりすることは、よくあります。
それを「最近の若い奴らはなっとらん」と、いつまでも部下のせいにしてばかりいるのであれば、少し見方を変える必要があると思います。
ここでの部長と課長の関係を、部署間の問題に拡大して考えることもできます。ある部署とある部署が慣例的に対立している企業はよくあります。本社と支店、最前線の営業と間接部門、仕入れ部門と販売部門。
対立は社内で常識であり誰も疑いを持っていない。「そういったものだ」とあきらめてしまっている。人材交流がなく、互いの仕事への理解や想像力が欠如し、連携が悪く、小さな問題がいつも頻発している。
こうした会社では、部長同士の仲が悪いことも多いですね。縄張り意識です。すると、互いの上司は「もっと連絡を密にとれ」と部下に指示を出し、部下レベルの「関係性」に問題の原因を帰着させようとします。
正面から取り組むべきは、風土として根付いてしまった部署間の対立をどうすべきかです。部下に問題を押しつけ、より大きな課題に取り組むことから逃げ続けていては、問題は繰り返されるだけです。
土が腐っていると、葉が枯れ、花が奇麗に咲かなくなります。いくら葉っぱや花が「問題」だと叫んでも、土をなんとかしなければ現状は変わりません。枯れた葉や花(小さな問題)は、「もっと大きな問題がありますよ、ほら、根っこの方をよくみて」と、私たちに教えてくれているのです。
「リーダーの条件」として古くから言われてきた言葉が思い浮かびます。
「大局観」
それは、すべてがつながっているという世界観を持つことです。
「大局観」をもって、常に全体に目を向けることを忘れないで下さい。そうすればきっと、上司として社内で一歩抜きん出た存在になると思います。
(著:松山 淳)
2. 私は、問題の根っこを探そうとする意識があるだろうか。
3. 私は、他部署との連携を失っていないだろうか。