第4章-4 他人との比較をやめると「やる気」は維持できます
人は、やたらと自分と他人を比べたがります。
他人と自分を比べ、安心したり不安になったり、密かに喜んだり、怒りを露(あら)わにしたり、自信をもったり失ったり、忙しいものです。
他人との比較ばかりしている人は、そうでない人に比べて、モチベーションの浮き沈みが確実に激しくなります。
「自我関与(ego involvement)」
という言葉が、心理学にあります。これは、「自分には価値がある」と感じられる感覚が、特定の結果に依存しているプロセスを指します。
社内の誰かより自分は上か下かという結果を常に気にし、上だとわかれば元気になり、下だと判明すると気分を害する。「勝ち組」「負け組」という言葉が一時期流行しましたが、自分は勝ち組なのか、負け組なのかをやたら気にする人も、自我関与の度合いが高いと言えます。
また、「これができたら自分はすごい」「あれができなかったから、自分はダメな人間」という「条件つきで自分を大切にする」思考パターンをできるだけやめることも大切です。
何かの結果しだいで、株価のように自分の価値を上げたり下げたりする思い癖は、間違いなくモチベーションに悪影響を及ぼします。
常に他人との比較に明け暮れると、精神はすり切れていきます。上司になればなおさらそうです。なぜなら、会社に長くいればいるほど、自分との比較対象である社員が増えていくからです。
部下もそのひとりです。
「部下より仕事ができる」「部下より自分は上だ」と確認することで自分の存在価値を認める、つまり自尊心を満たそうとするなら、心のなかが毎日戦争のような状態になってしまいます。
これでは、部下の「やる気」を削ぐばかりでなく、自分自身のモチベーションを維持することも危うくなってしまいます。
自分を尊い存在だと認めることができているなら、他人と自分を比べることはありません。人を非難したりせず、尊重し受け入れることができるはずです。
他人の悪口ばかり言っている人は、実は自信がないのですね。もっと「自分を認めて欲しい」と叫んでいるようなもので、「自己信頼感」が希薄なのです。悪口好きな部下がいたら、あなたらしくこんなことをアドバイスしてみてください。
「君の人間的な価値を他人と比較して証明するようなことは、もうやめたらどうだろうか。人の悪口をどれだけ言っても、君自身が成長するわけではない。他人を攻撃して傷つけどれだけ満足しても、君の心を完全に満たすことはできないし、そのことで、実は自分自身を傷つけていることに気づくべきだと思う」
社会人経験の浅い部下だととかく、他人と比較して自分の価値を見出そうとします。そして、その思考癖がもとでモチベーション・ダウンを招いている人がとても多いのです。
あなたの部下は、十分に価値がある存在であることを、少し照れくさいかもしれませんが、教えてあげて下さい。
自分の顔は、自分で見ることができないように、自分の価値は、なかなか自分ではわからないのですから。
(著:松山 淳)
2. 私は、「これができたら自分は凄い」と条件付きで自分を大切にする思考パターンに
陥っていないだろうか。
3. 私は、人の悪口ばかり言っている人に巻き込まれていないだろうか。