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第3章-5 できる人もできない人もいるのが職場です
「Aさんって部下のこと、差別しますよね」
五人の部下を持つAマネジャー(30代・女性)は、部下のひとりから、こう言われてしまいました。
新人時代、Aさんは、上司から「差別」を受けていた経験があったので、部下を差別しないよう細心の注意を払ってきたつもりです。
ところが、一番大切にしてきたことを「できていない」と言われ想像以上にショックを受けます。そこで、先の言葉を発した部下に、正直に聞いてみることにしました。
「Aマネジャーが、私たち部下を平等に扱おうとしてくれることは嬉しいのですが、そうされ過ぎることは、信頼されていないと感じます。能力には差があるのですから、それにあわせて仕事をふってもらいたいのです。全員を平等に扱おうとすることは、逆に差別していることになると思います」
Aさんは、部下と自分を重ね合わせ、「差別をしない」「平等に扱う」という信条にとらわれすぎていたようですね。
「平等」と「公平」は違う。
「公平」とは、人によって仕事の能力には「差」があることを認め、その人の能力に合わせて公正さをもって対応すること。
部下の能力には、差があります。それでいいのです。
誰もがスター選手のようにならなくても構わないのです。
FIFA(国際サッカー連盟)に「20世紀最強のクラブ」と認められたイタリアの名門サッカークラブ「レアルマドリード」は、フィーゴ、ジダン、ロナウド、ベッカム、オーウェンなど超一流選手の補強を繰り返すにつれ、だんだんとリーグ優勝から遠ざかっていきました。
個々の「能力の差」が結果的にはチームとしての「まとまり」を生むのです。
こういった公正な発想を持つ上司がいる職場は、とても明るいものです。
職場に公平感が保たれています。
上司が「なんとかならないか」と思っている部下がいてこそ、その職場はうまくいっている可能性があります。そう考えると部下たちを公平に見ることができ、否定的な評価を下すことが少なくなっていきます。
こんな上司の多い会社では、部下がよく育ちます。なぜなら、上司から肯定的な評価を受けていると感じている部下ほど、よく育つからです。
肩から力を抜いて、もう一度、職場を眺め直してみて下さい。
チームワークとは、能力の差があるからこそ高まる「人の力」です。
(著:松山 淳)
2. 部下の誰もが同じように能力を伸ばすべきだと思っていないだろうか。
3. 部下に差をつけることを恐れ、評価の本質を見失っていないだろうか。。