第1章-1 部下から陰口を叩かれるぐらいでいい
「さんざん陰口たたいていたけど、ほんとは尊敬してたんです」
ある企業に勤める方が、かつての上司について、まるで矛盾するような感情を口にしたことがあります。その人は、批判していた上司に、実はとても感謝していたのだと言います。
とかく上司は部下から「批判」されます。
なぜなら、上司は部下を「マネジメント」する立場にあるからです。「マネジメント」とは人を「管理」することです。「管理」するためには「指示」や「命令」が必要になります。
「指示」や「命令」は「自分のすることは自分で決めたい」という人間の本能的な欲求を少なからず奪います。欲求が叶わないと、人は「批判」の矛先を欲求を奪った相手に向けます。上司への悪口はこうして生まれてきます。
最近、部下との関係は、いかがですか。
あまり、しっくりいっていないと感じている方も多いと思います。だからといって、部下があなたを尊敬していないかというと、そんなこともありません。部下と向き合おうとしてさえいれば、部下は不快な感情を表に出しながらも、実は、「ありがたい」と思っていることがあるのです。
だから、安心して下さい。少し肩から力を抜いて下さい。
もし、あなたに対して批判的な部下がいて、心を煩わせているのなら、こう考えてみて下さい。
部下からの「批判」は上司にとって「勲章」。
「批判」はあなたが何かをしたことの「証」です。何もしていない人には「批判」すらありません。真剣に仕事に取り組み、部下とともに成果をあげようと懸命になれば、必ず感情的なぶつかりあいは出てきます。それが、普通です。
上司は、部下に気に入られるのが仕事ではありません。
部下の顔色をうかがうのが、上司の役割ではありません。
「批判」がどうしても気になるときは、ローマ帝国の「五賢帝」のひとりマルクス・アウレーリウスの言葉を思い出して下さい。
(『自省録』岩波書店)
上司は、部下から嫌われていることをわかっていても、「こいつを育ててやらなければ」と「あるがままの姿」を部下のなかに見出そうと努力し、部下の可能性を信じる存在です。
どうか、「批判」になんか負けないで下さい。
あなたは「陰口」になんかに負けるような人ではないはずです。
(著:松山 淳)
2. 私は、部下からの批判に過敏になっていないだろうか。
3. 私は、部下の成長を願っているだろうか。