原則❷:不安は不安のまま、やるべきことに集中する!
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、「不安」が大きくなるのは、誰にも起こりうることです。
そんな不安が大きくなる社会状況にあって、不安と上手につきあうポイントは、「誰でもそうなる」と考えることです。「不安」になるのは普通のことであり、不安を過度に問題視するのではなく、「不安」は誰にでもあることと、肯定的にとらえることが、ストレスを少なくしていきます。
20世紀最大の悲劇といわれたナチスの強制収容所を生き延びた心理学者フランクルは、世界的ベストセラー『夜と霧』(みすず書房)にこう書いています。
異常な状況においては異常な反応がまさに正常な行動であるのである。
『夜と霧』(V・E・フランクル みすず書房)p99
つまり、社会全体が非常時の雰囲気に包まれている時には、ストレスを感じている自分を、「どこか変じゃないのか」「異常なんじゃないか」と考えるのではなく、むしろ、「人として普通のこと」と考えて、心を落ち着かせてみましょう。
人は「不安」が大きなると、こう考えがちです。
「この不安が悪いんだ」
「この不安を消してほしい」
「この不安がなければ、うまくいくのに」
不安感は決して心地よいものではありません。だから人は、不安を「悪者扱い」「邪魔者扱い」して、消えて無くなればいいと考えます。
でも、本当に「不安」は悪者扱いすべき感情でしょうか?
そもそも、何らかの感情は、人間に必要だから存在しています。デメリットがあればメリットがあり、「不安」にもメリットがあります。
例えば、3週間後に重要なプレゼンが控えている会社があったとします。取引額は大きく、会社の命運を左右するプレゼンです。そのプレゼンをある若手社員が任されました。指示された時には、「えっ!私がやるのですか?そんな無理ですよ!」と驚くほど…。考えれば考えるほど、不安になり無理に思えます。
「失敗したら大変だ」。不安感は日増しに強くなっていきます。でも、プレゼンの準備をしっかりやろうと、入社以来、初めて本気になったような素晴らしい働きぶりを、その若手社員はみせました。
上司も「初めて本気になったな」と喜んでいます。
「窮鼠猫を噛む」ではありませんが、不安感が強くなるピンチに追い込まれて、それまで以上の力を発揮するのは、どんな人でも経験することです。
こう考えると、「不安」というネガティブな感情は、人のモチベーションを高め、仕事の質を高めるポジティブな役割を果たしているのがわかります。若手社員は「不安」だったから、プレゼンに対して用意周到になれ、本気になれたのです。
「不安」にもポジティブな役割があります。
不安に対する否定的な認知の仕方=「不安は悪者だ、消えてなくなれ」が、不安感を強めます。その考え少しでもをゆるめて、「少しぐらい不安はあってもOK」「不安も力になる」と、不安の肯定的な側面を認め受け入れれば、不安感をやわらげていくことができます。
不安を悪者扱いせず、必要以上に問題視しないことが、不安からくるストレスに強くなるポイントです。
不安に対する考え方をポジティブにしていくことで、不安感をやわらげることができます。ただ、不安は自然と湧いてくるもので、コントロールのしにくい感情です。
「不安だな〜」と嫌な気分になったりブルーになって落ち込む時、それは「不安」に意識のチャンネルがあっている状態ですね。
「コロナ騒ぎで、なんとなく不安で、夜も眠れなくて、仕事が手につかないのです」
そう悩む人に、例えばですが…「おめでとうございます!宝くじで3億円があたりました!」と連絡があったら、どうなるでしょう。
よほどの大金持ちか、よほどの無欲の人じゃなければ、「コロナウイルス」から「3億円」に意識のチャンネルは移り、 「喜び」の感情に満たされるはずです。その時、「不安」はきれいに消え去っていることでしょう。
でも、コロナウイルスが日本の街のどこかにあって、 感染数が拡大しているという事実は変わっていません。
では、何が変わったのでしょう。変わったのは、その人の意識のチャンネルの「合わせどころ」です。
だから、問題は「不安」そのものではなくて、意識のチャネルをどこに合わせるかです。人の意識は、その瞬間、瞬間、ひとつの思考や感情に支配されます。どんな時でも切り替えが可能です。そこで、「原則2」です。
不安があるから、人は危機に備え、危機に対処し、 危機を乗り越えてゆくことができます。
不安はあっていいのです。前述の若手社員のように「強い不安」があっても、不安を抱えたままでも、素晴らしい働きをすることができます。
そう不安をポジティブにとらえ、自分のやるべきことに集中していく。すると、意識のチャネンルが切り替わり、その時、不安はキレイに消えているのです。
新型コロナウイルスが広がり、日本も世界も、状況は大きく変わりました。ですが、 私たちには、変わらず、日々、やるべきことがあります。
仕事のことでも、家のことでも、コロナ以前と変わらずに、今、やるべきことがあります。その、今、やるべきことは、世界的感染拡大を食い止めることに比べたら、自分でコントロールできることです。
だから、不安を感じる時間を少なくするために、目の前にあるやるべきことに集中するのです。これを「目的本位の行動」といいます。
自分の不安感にチャンネルがあって行動しているのは、「感情本位の行動」です。「感情本位の行動」ではストレスに弱く、疲れやすくなります。
「感情本位の行動」ではなく、自分がやるべきことの「目的」に焦点を合わせ行動していくのです。
どんな仕事でも、必ず、誰かのためになっています。会社の仲間のため、お客様のため、家族のため、この国の未来のため…、そんな「目的」に意識を合わせて、行動をしていくことで、ストレスに強くなれます。
目的が善であれば、その行動はとても尊いことであり、意味のあることです。そんな「意味のあること」に取り組んで集中していけば、 人は、心を健やかに保つことができるのです。
(文:松山淳)