他人から「してもらう」立場でいる人間は、足りないことばかりが目につき、不平不満ばかりを口にする。しかし、社会人になったら、「してあげる」側に立って、周囲に貢献していかなくてはならない。そのためには人生観、世界観を一八〇度ひっくり返さなければならない
『生き方』(稲盛和夫 サンマーク出版)p175
この「新入社員に贈る言葉【例文】」は、メルマガ『リーダーへ贈る108通の手紙』で配信した内容を再構成したものです。次世代のために、もし、お役に立ちそうでしたら、どうぞ自由にお使いになってください。
目次
未知の世界に向かうのは、
足がすくむような思いもすることでしょう。
けれども、未知は、可能性であり、希望でもあります。
やってみなければ、何も始まらない。
『働く。―社会で羽ばたくあなたへ』(日野原重明 冨山房インターナショナル)p132
100歳を超えて現役の医師として働いていた日野原先生の言葉です。
これから社会に旅立つ皆さんにとって、会社や仕事は「未知の世界」ですね。未知とは、「まだ知らないこと」です。
これから先どうなるのか、知らなかったり、わからなかったりすると、人は不安になります。不安は心へのプレッシャーとなり、行動にブレーキをかけます。不安が大きくなると、人は不安な状況を避けて、行動範囲が狭くなってしまうのです。
自分にブレーキをかけ行動範囲が狭くなると、仕事もうまくいかないくなることが多いですし、そのことは結局、自分を「小さな人間」にしてしまいます。
社会に出たら、自分を磨き、度量のある「大きな人間」になるのが、ひとつの目標です。
そこで、不安が大きくなった時には、発想を転換してみましょう。日野原先生の言葉にあるように、
未知とは可能性であり、希望である。
そう考えてみるのです。
皆さんには「未来」があります。これからの未来で、皆さんがどんな活躍をするのか、それはわかりません。未来がどうなるかはわからない。けれど、わかっていることがあります。それは、皆さんの未来に、大きな可能性があるということです。
なぜなら、まだ若い皆さんは、人生の折り返し地点を過ぎた私などよりも、多くの「生きる時間」を持っているからです。「生きる時間」があるということは、それだけ多くの自分自身の可能性を試すことができることを意味します。
多くの可能性を試すことができるのですから、皆さんの未来には、大きな可能性に満ち溢れているといえるのです。
そして、それを「希望」というのです。
日野原先生は、「やってみなければ、何も始まらない。」といっています。
やってみましょう。どんな時にも希望をもって、生まれ持った可能性という花を、この会社で、この社会で、大いに咲かせましょう。
「理解ある立派な先輩についた人は、それはそれで感激し、そのことを喜んでいいと思いますが、一見無理解と思われる先輩にぶつかった人も
〝これは、自分が名人になれるチャンスだ〟
というように、積極的に受けとめてはどうでしょうか。そこに自分を大きく伸ばしていく道があるのではないか、そんな気がするのです。」
『社員心得帖』(松下幸之助 PHP文庫)p31-32
入社すると、いろいろな人がいます。好きになれる人もいれば、どうも合わないなと、嫌いになる人もいるでしょう。
どんな会社にも、いろいろな人がいて、そこで、いろいろな人間関係があるものです。好感をもてない人にぶつかることは、ちょっと辛いことですけど、でも、それは同時に、とても意味のあることです。
今から20数年前の新人時代、私の上司がよく言っていました。
「嫌いな人に先に会いに行け!」
その頃の私は、上司のいうことを「ただの根性論・精神論」だと思えて、バカにしていたのですが、人生経験を積んできた今となっては、上司の言っていたことは正しかったと思います。その理由は、こうです。
嫌いな人から、私たちは多くのことを学ぶことができる。
どうもあわないなと思う先輩や上司に出会ったら、それはまさに松下幸之助さんがいう「名人になれるチャンス」なのです。では、なぜ、私たちは嫌いな人から多くを学ぶことができるのでしょうか。
なぜならば、相性の合わない人、自分の「嫌いな人」は、自分に足りない才能を持っていることが多いからです。
心理学的にいいますと、相手が自分に欠けているものを持っているから、自分の劣等感が刺激されて「嫌い」という感情がわきおこってくるのです。
「こんな人とはやってられない!」
「なんて嫌な奴なんだ!」
「マジでムリ!」
そう感情的になってネガティブになった時、 目の前にいる嫌いな人がもっている要素が、実は、今の自分にとって必要な要素であることが多いのです。
ですから、私の上司が言っていた、「嫌いな人に先に会いに行け!」という言葉は、ただの「精神論・根性論」ではなくて、自己成長を加速させる現実的に有効な「生きた知恵」といえるのです。
皆さん、こんな言葉を聞いてことがありますか。
我以外、皆、我が師なり。
この言葉どおり、自分のまわりにいる人は、好きであろうが、嫌いであろうが、何かを学びとれる「師」なのです。
社会に出て会社で働くというのは、多くの「師」に出会うことです。多くの「師」に出会えれば、よりよく自分を成長させることができます。
多くの人に出会い、多くの「師」に出会い、この会社、この社会で、自分をどこまでも成長させていきましょう。
嫌いな人からも学ぶような、皆さんの力強いご活躍をお祈りしています。
『スターウォーズ』をつくった映画監督といえばスーティンブ・スピルバーグですね。では、スピルバーグが、尊敬してやまない映画監督といえば、誰でしょうか。その監督は日本人です。映画好きな人なら知っているでしょう。
黒澤明監督です。『7人の侍』など多くの作品が、ハリウッドの映画監督たちに影響を与えました。
その偉大な黒澤監督に、こんな言葉があります。
「僕はいつでもいちばん最初にスタッフに─俳優さんに言うのは、失敗をこわがるなということです。変にけちな成功をするぐらいなら、意味のある失敗をするほうがいいから思い切ってやれ。
子供が紙に字を書く場合に畳の上まではみ出して書くでしょう。ああいう感じでやってくれということをいちばん先に、初めての人に必ず言うのですけれどもね。第一、完成しちゃうのがいちばんこわいな。」
『黒澤明』(キネマ旬報社)p16
この言葉の後で、黒澤監督は、新人を育てる大切さを強調し、「絶えず新しい年代を入れて行かないとダメだ」と言っています。
つまり、新しい年代である新入社員の皆さんが、どんな会社でも、どんな組織でも、もちろん我が社にとって、とてもとても大事な存在なのです。
今、どんな目標をもっているでしょうか。多くの人が、なんらかの形で成功したいと思っていることでしょう。失敗したいという人は、いませんよね。
社会という大きな海に漕ぎ出すで皆さんにとって、「失敗」は怖いもののひとつかもしれません。他人の目を気にして、「失敗しないように、恥をかかないように」と、人は臆病になりがちです。
でも、私が皆さんに強く言いたいのは、黒澤明監督がいうように、
「意味のある失敗は、どんどんやってほしい」
ということなのです。
「意味のある失敗」があれば、「意味のない失敗」があります。この2つの違いは何でしょうか?
「意味のない失敗」とは、失敗がその人のためにならない失敗です。ですが、失敗して、そこから教訓を引き出し、引き出した教訓を次のチャンスにいかしていくのならば、その失敗は「意味のある失敗」になります。
つまり、失敗した後に、それを「意味のある失敗」とするのか「意味のない失敗」とするのかは、皆さん次第だということです。
そう考えると、どんな失敗も「意味のある失敗」になり得るということです。
私も多くの失敗をして、今、こうして皆さんの前に立っています。これからこの会社で、この社会で出会う、多くの人も、多くの失敗をしています。
そう考えると、仕事をして成功した人というのは、失敗をしなかった人ではなく、「失敗を次にいかした人」だといえます。
人は、失敗して失敗して成長していくのです。
「意味のある失敗」をしましょう。失敗を意味のあるものにしましょう。
そのことを忘れなければ、皆さんの活躍は保証されたようなものです。
これからこの会社で、この社会で、たくさんの「意味のある失敗」して、たくさんの「いい仕事」を一緒にしていきましょう。
(文:松山淳)
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