1961年東京都生まれ。創価高校から東京学芸大学に進学し、大学時代は投手、内野手として活躍する。その後、1984年、ヤクルトスワローズにドラフト外で入団。1年目で1軍デビューを果たす。スイッチヒッターとなり活躍するも、メニエール病に苦しめられる現役生活となった。1989年ゴールデグラブ賞を受賞。1990年、引退。現役生活は7年と短かった。
引退後は、『報道ステーション』(テレビ朝日)の野球解説者など多くのメディアに登場し、お茶の間の顔となる。スポーツジャーナリスト、野球評論家などの仕事を通してキャリアを築く。2004年には白鴎大学の教授にも就任している。
2011年、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。就任1年目にしてリーグ優勝を果たす(2012年)。2016年にもリーグ優勝し、日本シリーズを制して日本一となる。2021年、日本ハム監督を退任する。その年に、野球日本代表「侍ジャパン」の監督に就任。2023年、第5回WBC(World Baseball Classic:ワールドベースボールクラシック)には、日本ハム時代に育成したメジャーリーガー大谷選手が参戦。
2023年3月、WBC予選(POOL B)にて、中国、韓国、チェコ、オーストラリアに勝利し、全勝で予選を突破。決勝ラウンドで3/16にイタリアと対戦し勝利。3/21、アメリカにてメコシコ代表に9回裏逆転で勝利をおさめる。
3/22、決勝戦でアメリカ代表を撃破し、第5回WBCを制覇する。
著書:『未徹在』(KKベストセラーズ)『稚心を去る』(栗山英樹)『「最高のチーム」の作り方』(KKベストセラーズ)ほか。
目次
栗山監督の名言1:未熟を意識しつづける
栗山監督は、毎年、元旦に自分との約束事を書くそうです。
吉田松陰の言葉に「人間たる者、自分への約束を破る者がもっともくだらぬ」とあります。この言葉を栗山監督はひいて、「くだらない人間にだけはなりたくない」といっています。
自分との約束。
これを守るのは、簡単なようでいて、実は最も難しいものかもしれませんね。人には欲があります。その欲に流されてしまうのが人間の性(さが)だからです。
早起きしようと思っても、もっと眠りたいという「欲」が勝ちます。ダイエットのために「食べないぞ」と決めても、もっと食べたいという「欲」が上回ってしまいます。
欲に負けて「自分との約束」を破ってしまう弱さが人にはあります。
だからこそ人は、1年の節目に約束事を書くのでしょう。元旦の「書き初め」も、そのひとつといえます。
栗山監督は、著書『未徹在』(KKベストセラーズ)の中で、こう書いています。
そもそも、いつまで経っても徹して到達することなどありえず、己の未熟さに気付くからこそ、助力を得て人生を深めることができる。「未徹在」であるがゆえに、また頑張れるのだ。
本のタイトルになっている「未徹在」とは、仏教の言葉であり禅語です。弟子が、修行に徹することができず、悟りに到達していない未熟な状態が「未徹在」です。
己の未熟さを忘れ、傲慢になった時から、失敗は始まるものです。
反対に、栗山監督がいうように、己の未熟さを常に意識することで、人から助けを得て共に成長し、人生を深めることができます。人はまだまだ自分は未熟だとわかっているからこそ、さらに努力を重ね、今よりさらに成長することができるのです。
栗山監督の名言2:やめるのは一番簡単な決断だ
日本ハムの監督時代、札幌ドームの監督室にあるホワイトボードに大切にしたい言葉を、栗山監督は書いていました。
「至誠にて動かざるは未だ之あらざるなり」
「負けの99%は自滅である」
「夢なき者に理想なし 理想なき者に計画なし 計画なき者に実行なし 実行なき者に成功なし ゆえに夢なき者に成功なし」
「至誠にて動かざるは未だ之あらざるなり」
この言葉は、中国の古典『孟子』にあるもので、「誠を尽くして、心を動かなかった人はいない」という意味です。吉田松陰がいった言葉としても有名です。
「夢なき者に理想なし 理想なき者に計画なし 計画なき者に実行なし 実行なき者に成功なし ゆえに夢なき者に成功なし」
これも、吉田松陰の名言です。
栗山監督は、白鴎大学の教授にもなっている人です。日本ハムの選手たちに、渋沢栄一の『論語と算盤』を教えたこともあると、『未徹在』(KKベストセラーズ)には書かれてあります。
こうした言葉を大切にし、監督室でいろいろな決断をしてきたのが栗山監督です。こんな言葉も記しています。
やるかやめるか、それで言えば、やめるのは一番簡単な決断だ。難しいからやめよう、不安だからやめよう、そうしていればたしかにリスクは回避できるかもしれない。でも、決して前には進めない。
迷った時は、難しい道を進め。
昔からよくいわれることです。難しい道を進むと、大変なことは増えますけれど、将来的には実りある人生となる可能性が高くなります。やめるのは簡単です。でも、その後が、いろいろと大変になるのが人生というものです。
上の言葉につづけて、栗山監督は、こう書きます。
「やめるのは簡単だけどやれる努力をしよう」「困難な選択肢を選んで、無理してでもやれる形を作るのも我々の仕事なんだから」と、いつも自分に言い聞かせている。(p62)
やめて何もせずで後悔するか。
やって失敗して後悔するか。
後悔するのは同じようですが、あとあと後悔が続くのは、何もせずの後悔です。なぜなら、やって失敗の後悔は、行動したことが次につながる財産となるものの、何もしなかった時には、次につながるものがないからです。
やれる努力してみましょう。
やったことは、人生の財産となるのですから…。
栗山監督の名言3:人間性を養うことでチームが伸びる
栗山監督は、選手たちの人間性を伸ばすことを目的に、選手たちに『論語と算盤』を教えていました。本そのものを選手たちに配ってもいたそうです。
選手が選手としてどこまでの伸びるのか。それには「人間性」が深く関係してくる。
よく聞くことですね。人間性とは人間の「器」です。「器」が大きくなることで、それにふさわしい技術が身についてくるわけですね。
器が小さいければ、器量の小さな選手として終わってしまうというわけです。
『致知』(2022 12月号)にて、元男子サッカー日本代表の岡田武史監督と対談していて、次の言葉を口にしています。
スキルはもちろん大切ですけど、人間性を養っていないとチーム全体として大きく発展していかない。
「論語」は孔子の思想であり、算盤(そろばん)とは、お金のことです。つまり、思想とお金という相反するものを同時に大切せよ、というのが渋沢栄一の教えです。
「人間性」と「スキル」(技術)も、それに似ています。
「人間性」と「スキル」は相互に深く関係していて、ふたつを同時に磨いていくことで、人は伸びていくのです。ひとりの選手が成長することは、チームによい影響を与えます。その数が増えていくことが、チーム全体としての発展です。それはチームが強くなるということです。
スキルだけでなく、人間性を磨くことも忘れないでいたいものです。
そういえば、ヤクルトや阪神を復活させた名将野村監督が、こういっていましたね。
「人間的成長なくして技術的成長なし」
栗山監督の名言4:没頭するからわかる世界がある
『致知』(2022 12月号)は、2022年(8/24)に亡くなった京セラ創業者稲盛和夫さんの特集号でした。
栗山監督と岡田元監督は、稲盛さんを話題に対談をしていました。
稲盛さんの教えに「ど真剣に生きる」があります。真剣ではなく、「ど真剣」です。真剣を超える「ど真剣」でなければ、それほど情熱を傾けて没頭しようとする生きる姿勢がなければ、成功することは難しいということです。
栗山監督は、対談の中で、こういっています。
いまの世の中って、仕事しすぎちゃいけない、「寝ないで仕事をしろ」とは言いにくい時代になりました。僕は仕事でしか学べないことがあると思っていて、寝ないで仕事に没頭するある一時期って大切だと思うんです。
没頭し、やり切らないと見えてこない世界があるんです。
努力が裏切ることが、現実にはあります。
でも、努力が無駄になることはありません。
努力という経験は、後で必ず何かの役に立つのです。夢や目標に向かって寝ないで仕事をした経験は、例えすぐに結果にならなくても、その経験が次のチャンスをつかむ力になるのです。
稲盛和夫さんの著書『6つの精進』(サンマーク出版)には「一生懸命働くことが幸せな人生の条件」という小見出しがあり、稲盛さんは、こう書いています。
「すばらしい人生を生きるにせよ、すばらしい企業経営をするにせよ、誰にも負けない努力をすること、一生懸命に働くことが必要です。このことを除いては、企業経営の成功も人生の成功もありえないのです。一生懸命に働くことを忌み嫌い、少しでも楽をしようと思うならば、企業経営の成功はもちろんのこと、すばらしい人生も得ることはできません」
『6つの精進』(稲盛和夫 サンマーク出版) p15
一生懸命であることは、とてもシンプルながら、人生を成功に導くために、とても役にたつ生きる姿勢です。
栗山監督の名言5:「こうなる」と考える
稲盛さんの願望実現を目指す人に向けた教えてとして、次の言葉があります。
頭のてっぺんからつま先まで全身をその思いでいっぱいにして、切れば血の代わりに「思い」が流れる。それほどまでひたむきに、強く一筋に思うこと。そのことが、物事を成就させる原動力となるのです」
『生き方』(稲盛和夫 サンマーク出版) p42-43
つまり、「夢が叶えばいいな〜」「目標を達成できたらいいな〜」といった中途半端な「思い方」では、実現はおぼつかないというわけです。
成功する人は、寝ても覚めてそのことを考え続ける、といいます。まさに「ひたすらに強く思い続けること」が何かを成就させる力となるわけですね。
栗山監督は、『「最高のチーム」の作り方』(KKベストセラーズ)にて、こう書いています。
「こうなったらいいな」ではなく、「絶対になる。こうなる」と考える。「こうなる」という前提があってはじめて、いったいどうすればそうなるんだろうと考えられるようになる。「こうなったらいいな」と思って考えるのと、「こうなる」と信じて考えるのではまったくプロセスが変わってくる。「そこにたどり着くために、今日自分は何をすればいいのか」といった具合に発想も変わってきて、そこに知恵が生まれるのだ。
「こうなったらいいな」ではなく「こうなる」。
「こうなる」と考えることで、より、そこにたどり着くために何をすればよいかを具体的に考えられるようになる。することが具体的なほうが、努力をしやすくなる。努力がしやすくなり、努力を積みかねることで、目標にたどり着く。
「こうなる」。
その思いの強さが、人を夢へと導いてくれます。
栗山監督の名言6:本気にさせるのは言葉だけではない
2016年、再びリーグ優勝した年に、栗山監督は、チームの中心選手だった増井選手をファーム行きを命じたり、中田選手をスタメンから外したりしています。
栗山監督は、選手を本気にさせるために、あえて厳しい選択しました。中心選手への厳しい対応は他の選手たちにも伝わり、チーム全体に緊張感をもたせることができます。
栗山監督は、こう、いっています。
選手を本気にさせるのは、「言葉」だけではない。どうやってメッセージを送れば、本当に危機感を感じてもらうことができるか。それはあえて大きな負担をかけることだったり、試合に出さないことだったりする。選手は不愉快に思ったり、「この野郎」と監督を憎んだこともあるだろう。
スタメンから外されることは、悔しいことです。
その悔しいことを先に体験させることで、選手に危機感をもたせ、本気にさせて、最後の最後、笑うことができると、栗山監督は考えました。
リーダーの立場にいる者は、時に「嫌われ役」を演じなければいけません。好かれることばかり考えて、甘くなると、チームから緊張感が失われて、結果的に、よくない事態を招きます。残念な結果がもたらされます。
「小善は大悪に似たり。大善は非情に似たり」
リーダーがフォロワーにする、本人のためになる本当の意味での善いことは、時に非情な決断を求められるものです。
栗山監督の名言7:尽くすことと責任をとること
リーダーシップ理論のひとつにサーバント・リーダーシップがあります。
支援型リーダーシップや奉仕型リーダーシップと訳されます。
上の地位にあるリーダーが、上から指示命令して、チームをひっぱるのではなく、リーダーがフォロワー(部下・選手)を尽くすことで信頼を獲得し、その信頼をベースにしてチームをまとめていこうとします。
ですので、サーバント・リーダーシップはフォロワー(部下・選手)に尽くすことから始まるのです。
栗山監督の言葉に、サーバント・リーダーシップに通じるものがあります。
もし、監督の仕事が選手に尽くすことだとすれば、人に自慢できる特別な能力があるわけでもない僕が、いま、こんなに幸せなことをやらせてもらっていて、人のために尽くさないなんてあり得ない。選手のために尽くすのは当然のことだ。
この言葉は、まさに「サーバント型リーダー」のマインドセットです。
そうだとすると、栗山監督の事例は、サーバント・リーダーシップの成功例ともいえます。
監督は「監督の仕事は選手に尽くすことと、責任をとることだ」とも書いています。
監督を上司、あるいはリーダーと置き換えても、通じる言葉ですね。
「リーダー(上司)の仕事は選手に尽くすことと、責任をとることだ」
「尽くすこと」と「責任をとること」。
このふたつの気概があることで、リーダーシップは力強いものになっていきます。
栗山監督の名言8:受け入れ覚悟を定める
自分に変えられないことでは悩まない。
自分に変えられることに全力を尽くす。
逆境に陥った時や、悩みを抱えた時の心得として、広く知られている教えです。
自然災害で家を失ったり、人事異動でキャリアが挫折したり、自分の力ではどうにもならないことが、人生では起きてきます。そんな時、変えられないことを、「どうしてこんなことになってしまったんだ」と悔やんだり、恨んだりしつづけていると、そこから先に進むことができません。
悔やむこと、恨むことは、堂々巡りをすることになり、創造的な行いではありません。
だから、変えられないことは、「起きてしまったことは仕方ない」と受け入れてしまうのが、未来に向けて次の一歩を踏み出す力になります。
栗山監督も、こう書いています。
自分の努力で変えられるもの、向上させられるものには頑張りようがあります。ただ、自分にはどうすることもできない逆境もあります。
まずは、それが自分の本分であると受け入れ、覚悟することです。
自分ではどうすこともできない逆境は、自分をさらなる高みに飛躍させるための試練です。
それは運命から与えられた「人生の宿題」です。
「人生の宿題」を「自分で考え、答えを出し、その答えを行動に移す」ことで、逆境をくぐり抜け、次のステージに進むことができます。
受け入れることには勇気がいりますが、その勇気を発揮すれば、人生に対する「覚悟」が定まるのです。
栗山監督の名言9:責任は果たすもの
プロスポーツの世界には、結果が求められます。結果を出せなければ責任をとる必要があります。監督であれば、辞めなければなりません。プロ野球の監督は、万年最下位で許されるものではありません。
数多くのプロ野球の監督が、結果を出せず、責任をとって辞めていきました。シーズンの途中で、監督が交代するケースもあります。
責任をとる覚悟は、リーダーに求めらるものです。
ですが、あまりに、「責任をとる」ことに意識をフォーカスしていると、それは同時に進退を問うことですので、発想がネガティブになりがちです。
栗山監督に、こんな言葉があります。
責任は「取る」ものではなく「果たす」もの。
「果たす」ことが、指揮官の責任だ。
『稚心を去る』(ワニブックス)p166
そうですね。責任は果たすものですね。
「どう責任をとるのか」ではなく、「いかに責任を果たすか」により意識を向けて行動できている時に、リーダーシップは力強いものになります。
今、私の果たすべき責任は何だろう?
この問いを日々、問いつづけ、その問いに対する答えを着実に行動に移していくことができれば、「責任をとる」ような事態は、遠ざかっていくことでしょう。
栗山監督の名言10:それで前に進むのか
プロスポーツの世界で、勝ち続けることはできません。
連勝はあっても、必ず、ストップがかかり、負けを味わうことになります。
3割打てば一流打者の仲間入りです。でも、3割打者とは7割アウトになっている打者のことでもあります。それはポジティブにいえば、7割の失敗を3割の成功にいかせるのが、一流打者ということです。
負けること、失敗することは、どんな人にもついてまわるものです。
だから「負け」や「失敗」を悔やむことはありません。なぜなら、「負け」や「失敗」とは、次に活かすものだからです。次の成功の質を高めるために、人は繰り返し「負け」「失敗」を経験するのです。
栗山監督は、こう書いています。
それに取り組んだら選手は前に進むのか。それができるようになったらチームは前に進むのか。前に進むんだったら何をやってもいい。前に進まないないんだったらやる意味はない。これが口グセだ。
負けてもいい。でも後退はしたくない。
つまり、「負け」「失敗」も、人生では「前進」になりうるのです。
反対に、成功という後退もあります。成功することで傲慢になり、努力を怠るようになったら、それは明らかな後退です。
人は、成功からより失敗から、より多くを学ぶものです。学んでいるのですから、それは前進です。
負けたからといって、失敗したからといって、がっかりすることはありません。
「さあ、次」
と、自分に声をかけて、前に進みましょう。
(文:松山 淳)
自己分析セッション by MBTI® プロスポーツチームも活用する自己分析メソッド
大リーグ、アメリカンフットボールなどプロスポーツチームも活用する国際的性格検査MBTI®を使用しての自己分析セッションです。MBTI®は、世界三大心理学者のひとりC.Gユングの理論がベースになっており、世界の企業が人材育成のために導入しています。その人の「生まれ持った性格」を浮きぼりにするのが特徴です。自分本来の「強み」を知ることができ、心理学の理論をもとに自己理解・他者理解を深めることができます。
《MBTI受講者実績:1,917名》
セッションには「対面型」と「オンライン型」(Zoom)があります。それぞれ、「個人セッション」と「グループセッション」をお受けしています。