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『大事なのは、どんな場においても、悔いのないよう「小さな勇気」を持って行動することだ。自分を変え、人生を変えるチャンスは至る所に転がっている。』
諏訪社長は、お父様の遺志を継ぎ、東京は大田区にある精密金属加工メーカー「ダイヤ精機」の後継者となった方です。会社を見事に再建・発展させた、その功績を讃えられて、日経BP社が主催する「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」では、大賞を受賞しています。
2011年からは、経済産業省・産業構造審議会の委員を務め、「ダイヤ精機」には、全国から視察する人が訪れる会社となっています。
「大きな勇気」よりも「小さな勇気」で日々、行動を重ねていくことが大事ですね。
「気に食わぬことを言ってくる者もいるが、そういう人こそ大切にしろ」
『日本経済新聞「こころの玉手箱」』(2013.10.1付け夕刊)より
「金言耳に逆らう」
そんな言葉がありますね。「金言」とは、自分のためになる教訓にあふれた言葉です。それが耳に逆らうとは、「聞いて耳が痛い言葉ほど自分のためになる教訓がそこにある」ということですね。
人は、「自分のためになる」とわかっていても、なかなかそれを受け入れられないものです。なぜなら、「金言」が「自分を否定する」からです。
でも、自己否定から始まる自己成長がありますね。
中国の古典『菜根譚』には、こんな言葉があります。
「耳中、常に耳に逆らうの言を聞き、心中、常に心に払(もと)るの事有りて、わずかにこれ徳を進め行を修むるの砥石なり」
現代語訳が、こう記されていました。
「たえず不愉快な忠告を耳にし、思い通りにならいことを抱えていればこそ、それが徳を磨き、修行を続ける砥石となる」
「気に食わぬことを言う人」も、その砥石のひとつであり、そう考えてみると、耳に痛い言葉ほど「金言」と考えて、やっぱり受け入れるに限りますね。
『「実は私もあなたと同じようなことを考えていました」というセリフをこれまでよく耳にしました。でも単に考えているだけなのと、実際に行動を起こしていみるのとでは天と地の開きがあるのではないでしょうか。』
『日本経済新聞「人間発見」』(2013.8.5付け夕刊)より
中村紀子社長は、元テレビ局のアナウンサー。今から25年前に「働く女性の支援」をビジョンに、保育事業に民間企業として参入しました。
現在では「待機児童」の問題が社会的な関心を集めていますが、当時は、女性は結婚したら専業主婦になるのが当たり前の時代でした。
ですから、国も決して中村社長に協力的ではありませんでした。中村さんは異端児だったのです。多くの規制や前例を乗り越えて、道なき道を切り拓いていきたのが中村社長です。
「ゼロから1までの距離は、1からの千までの距離より遠い」
これはユダヤの格言です。イエローハット創業者鍵山秀三郎氏が著書に書いていました。
何かを新しく始めるとき、必ず、反対や批判があります。最初の一歩が難しいわけです。でも、その反対や批判を乗り越えてこそ、新たなことは始まります。行動していくことがやはり大事ですね。
「英国海軍では、兵隊に塹壕を掘らせるときに将校は絶対に手伝わないということだ。それは、兵隊のやる仕事だと。そのかわり将校は、雨が降っても傘もささず、レインコートも着ずに立っている。やせ我慢だ。そして、全体を視野に入れながら、大きな指示を出す。この英国海軍の伝統こそリーダーシップだ」
「大局観」
「リーダーの条件」として、今なお、よくあげられる言葉です。これは中小企業から大企業のトップまで共通して言えることですね。
リーダーは、現場に足を運び、現場とともに知恵を絞り、最前線に立つことも必要です。部下を鼓舞するのにリーダーが現場にいることは、効果を発揮します。
しかし、リーダーが現場にどっぷりつかって経営に必要な「大きな判断」をしなくなっては困りものです。
「大きな判断」をする際に必要なのが、「ビジョン(未来のあるべき姿)」です。
現場を知りながらも現場に埋没せずに、「ビジョン(未来のあるべき姿)」をみすえて、会社という船の「行き先」が間違ってないか、「大きな判断」をしていくのがリーダーの大切な仕事ですね。
「リーダーシップは経営の核心である。数字をいじくったり、組織図を作り替えたり、ビジネス・スクールで編み出された最新の経営方式を適用したりするだけでは、事業の経営はできない。経営は人間相手の仕事である。」
「会社は人なり、人は会社なり」
どれだけすばらしい経営理論・経営戦略があっても、それを最終的に実行するのは……「人」。
リーダーが相手をするのは、最後の最後は……「人」。
AIが登場し、社会はさらにデジタル技術を基盤として大きな進化をとげていくことでしょう。10年前には考えもしなかった世界が、どんどん目の前に出現しています。
経営もそれに伴って、スタイルをかえてリーダーに求めらる資質もかわっていきます。
でも、どれだけ科学技術が進化しても「人」が経営を行うことは、変わりません。
そして、リーダー(経営者)が相手にするのも「人」ですね。
「私たちは社長と社員ではなく、固く結ばれたチームだった。だから誰かの誕生日がくると、私はついついパールのペンダントやスカーフ、セーターなどを買っては贈った。」
『日本経済新聞「私の履歴書」』(2013.6.19付け朝刊)より
「リーダーは地位ではない」
地位があるからリーダーではありません。リーダーとは、人を率いて信頼されているからリーダーです。
地位があっても、チームをまとめることはできなず、信頼されていない人がいます。反対に、地位などなくても、人に信頼される人がいます。
例えば、電車に乗っていて何か事件が発生したとします。みんなで力を合わせて脱出しなくてはいけない状況です。そんな時、「大丈夫、大丈夫」とみんなを励ましたり、先頭にたって人をまとめようと、瞬間的に動き出す人がいます。
こうした非常時に現れるリーダーを
「自然発生的リーダー」
と呼びます。
偶発的に出現するリーダーは、必ずしも社会的に高いポジションにある人ではありません。学歴の高い大企業の管理職や役員ではなく、普段から人慣れした、小さな魚屋さんや八百屋さんを営む店主かもしれません。
だから、リーダーは地位や役職にこだわらず、ひとりの人間として部下と向き合うことが大事ですね。
社長と社員ではなく、「人」と「人」として向き合うのです。
「あきらめの境地から生まれた度胸のようなものが、精神面の安定に結びつき、それが肉体的にも安定することに結びついたのではないか、という気がするのである。」
「あきらめの境地」
これには、ネガティブなものと、ポジティブなものがありますね。ポジティブなものは、いい意味での「開き直り」です。開き直った時、人は強くなれます。
松下幸之助さんは幼少の頃から病弱でした。その体の弱さは、生涯続きました。
『決断の経営』には、20代の頃に肺尖カタルという結核初期の診断を受けたことが書かれています。当時、結核は、10人のうち8人は助からないという恐ろしい病気です。
松下さんはそれでどうしたかというと、寝ていても直らないのだったら、思う存分働こかじゃないかと、そう覚悟を決めて、働きつづけたのです。無茶します。
松下さんも無茶な考えと認めつつ、でも、病気はそれ以上、悪くならなかったというのです。不思議なものですね。まさに「病は気から」で、「あきらめの境地」が、「強さ」に結びついた好例です。
「人生、一度きり。だったら、思い切ってやってみよう!」
そんな「開き直り」が、私たちを思った以上に、強くしてくれます。
「つらかったよ。でも、誰かがやらなきゃいけないんだ。チームをすばらしい状態に保つのは僕の仕事だとずっと思ってきた。僕がやらなきゃ誰もやらないからだ」」
「リーダは嫌われる勇気を発揮する」
様々な業界のリーダーの相談にのってきて、リーダーは、ホントに辛いものだとつくづく感じます。
「人間だから、楽したい」。この感情を「怠惰だ」と否定することなどなかなかできるものではなくて、やっぱり人間ですから、そう思うのは当然のことと思います。
それでもなお、現場に立てば、「人から嫌われることを言う」という因果な商売を続けなくてはなりません。部下に対して耳ざわりのいい言葉ばかり言っていては、健康的な緊張感がチームから消えてしまいます。仲良しクラブになってしまいます。
ですので、ジョブズがいうように、辛いけど、やらねばならぬことはやらないといけませんね。
「リーダーとは、誰かが言わないと誰もやらないことを、嫌われながらでも言う人」
「嫌われる勇気」を発揮して、いいチームを育てましょう。
「経営資源であるヒト・カネ・モノは有限でしょ。それをどれだけ選択と集中できるかが勝負ですから、アイテムが増えれば増えるほど、配分が薄くなる。だからあれもやれ、これもやれというのは戦略じゃない。何をやらないと決めることですよ。」
『致知』(2013年6月号)
戦略とは、しないことを決めること。
原田さんは、日本マクドナルドの社長も歴任しています。マックでは、一時期、カレーライスやチャーハンを出していました。
「マクドナルドでカレー?」
「チャーハン」となると、これはもう中華ですので、マクドナルドのブランド・イメージをブレブレにしてしまいますね。
原田社長は、もとスティーブ・ジョブズのいたアップルの日本法人社長を務めていました。アップルもジョブズが復帰する前は、プロダクトの種類がものすごく増えてしまい、「アップルらしさ」を失っていました。
あれもこれもになると、経営はうまくいかなくなるのが定説です。
「戦略」とは、戦いを略すこと。
「省略」という熟語がある通り、略は、「はぶく」という意味ですから、戦いを「はぶく」ためには、することをシンプルにしていくことが大事ですね。
「日本人は元来、人には見えない部分にお金を使い、気を使ってきました。スーツの裏地に良い素材を使って着心地を高める、あるいは、住宅では客間からは見えないトイレなど水回りの部分にお金をかける。料理でいえば、かくし味でしょうか。見えない部分にこだわることが、他人への心配りに通じるわけです」
『日本経済新聞「経営者ブログ」』(2013.4/11)より
見えない部分に人の心が見える。
日本人の手先の器用さは、世界に冠たるものです。世界最古の土器、縄文土器の芸術性は、他国に類をみないものであり、その歴史が、ものづくりを得意とする日本人のDNAだと感じます。
手先が器用だと、つくる技術に余裕が生まれ「もっと人が喜ぶ細工をしよう」というたおやかな精神が生まれるのではないでしょうか。
スティーブ・ジョブズが、日本の家電製品を分解して、内側のつくりの美しさに感動していたという話しがあります。アップルの数々の製品も、見えない部分に徹底的にこだわっていることは有名です。
見えない部分にこだわり、人を思う。
そうすることで、私たちは、心の豊かさを手にすることができますね。
(文:松山 淳)