第4章-1 上司だって「やる気」を失うときがあっていい
「スマイル仮面症候群」
カウンセラーや精神科医の元を訪れ、とてもつらい話をしているのにもかかわらず「満面の笑み」を浮かべている人が増えていると聞きます。心と身体が引き裂かれてしまっています。
つらい時には、泣くのが一番。涙は、そのためにあるのです。
いま、「プラス思考」という呪縛にとらわれ、多くの人が苦しんでいます。人は毎日、毎日、前向きに生きられる動物ではありませんし、そんな必要もありません。いつも笑顔じゃなくたっていいんです。
「プラス思考じゃないと運気が落ちます」
確かにそうかもしれません。そう信じることは、大切なことです。ですが、一つの考え方に凝り固まってしまうことも、不運を招く原因ではないでしょうか。
心が疲れるとは、心が柔軟性を失い固くなっていくことです。
ある一つの考え方や感情にとらわれ、心が動けなくなっては困ります。
さまざまな感情を経験することが人生の豊かさのはず。
心の豊かさを求めて身につけた「プラス思考」が、心の貧しさを生んでいては元も子もありません。
「上司」になる年齢ですと、とかく家族の前でも、部下の前でも「強い自分」を無意識のうちに演じ続けてしまいます。何かを演じることは、とても疲れますね。
「辛い」という字と「幸せ」という字はとても似ていますね。つらさを乗り越えたその先に、幸せが待っているからなのかもしれません。
長い人生、「不意の病」「不遇の転勤」「不慮の事故」など、かなしみにおそわれ、やる気を失うときだってあります。上司だって、ひとりの働く人間です。
モチベーションがダウンして、会社に行きたくないと感じることだってあるものです。そういった感情は、どんな上司だって、起こりうることです。ただ、人生の先輩たちにこう口にする人が、どれだけ多いことか。
挫折や逆境のなかでしか、つかめないものがあるのですね。
敬愛する詩人坂村真民氏にこんな詩があります。(『坂村真民一日一言』致知出版社)
かなしみの きわみに 詩が生まれ
かなしみの きわみに 光が射し
かなしみの きわみに 手が合わされる
「かなしみ」は、あなたの味方です。
(著:松山 淳)
2. 私は、周囲の人の忠告を素直に受けいれているだろうか。
3. 私は、仕事に追われ視野が狭くなり、何か大切なものを見失っていないだろうか。