SL理論(状況対応型リーダーシップ)
Situational Leadership

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 SL理論のSLは「Situational Leadership」の頭文字をとったものです。「Situational 」とは、「状況の」という意味ですので、SL理論とは「状況にあわせたリーダーシップ」の理論ということになります。

 SL理論の提唱者は、ポール・ハーシー(Paul Hersey)とケネス・ブランチャード(Kenneth H Blanchard )です。

  「Situational Leadership」は英訳者によって様々な訳語が当てはめられています。ここでは、SL理論の提唱者のひとりブランチャードの著『1分間リーダーシップ』(ダイヤモンド社)からの訳をとって「状況対応型リーダーシップ」といたします。

 理論名から、リーダーシップを発揮する際に「状況に合わせる」ということは理解できます。では、何の状況でしょうか?

  それは「フォロワーの状況」です。

 例えば、上司がリーダーで、部下がフォロワーというケースで考えてみます。部下には入社したての新人から仕事をひとりで回せる中堅どころの部下もいます。

 社歴の長いベテラン社員だけれど、異動がありその部署の仕事をするのは初めてであり、新人同様という部下もいます。営業部から人事部に異動したり、経理部から営業部にいったら、仕事に必要な専門知識がゼロに近い状態であり、最初は新入社員のようです。

 リーダーがどんな部下にも画一的に対応するのではなく、部下の仕事に対する発達度(状況)によって、リーダーシップ・スタイルを「しなやかに変えていこう」というのが「SL理論」です。
  
  では、どんな風に・・・?

 

 「SL理論」の提唱者ブランチャードは『1分間リーダーシップ』(ダイヤモンド社)の中で、4つの状況と4つの基本的なリーダーシップ・スタイルについて言及しています。その概念図が以下のものです。

 部下の発達状況に合わせて「指示的行動」と「援助的行動」の組み合わせ変化させていくわけです。双方の行動についてキーワードが3つあります。

 🔶指示的行動
    :『構造化する』(仕事の仕組みづくりをする)『コントロールする』『監督する』

 🔶援助的行動
    :『賞賛する』『傾聴する』『促進する』
                            
「SL理論」の4つの状況と4つの基本的なリーダーシップ・スタイルについての概念図  

 例えば新入社員への対応は、S(スタイル)1「指示型」が理想となるでしょう。会社のことも、仕事のこともまだよくわかっていません。社会人マナーから始まり、配属された部署に必要な専門知識までを教えながら、「こうしてください」と、接するスタイルはより指示的になります。

 それに対して、仕事をひとりで回せる入社5年目〜10年目の社員であれば、指示の度合いは減っていき、任せる度合いが高くなっていきます。実績があり信頼できる部下であれば、完全に「任せきる」というS4「委任型」が基本となるでしょう。

 「S1」から「S4 」までの簡単な説明は、以下の通りです。        

◆S1「指示型」
  リーダーは具体的な指示命令を与え、仕事の達成をきめ細かく監視する。 

◆S2「コーチ型」
  リーダーは引き続き指示命令を与え、仕事の達成をきめ細かくはするが、決定されたことも説明し、提案を出させ、前進するように援助する。   

◆S3「援助型」
  リーダーは仕事の達成に向かって部下の努力を促し、援助し、意思決定に関する責任を部下と分かち合う。 

◆S4「委任型」
  リーダーは意思決定と問題解決の責任を部下に任せる。
 
   『1分間リーダーシップ』
   (K・ブランチャード、P・ジガーミD・ジガーミ ダイヤモンド社)より 

 

 経理から営業に異動してきた部下に対して、最初は『指示型』をとり、その部下が仕事を覚えていく状況に合わせて『コーチ型』『援助型』とリーダーシップスタイルを変化させてきます。そうした流れを、概念図にある赤い線の矢印は意味しています。

 個人によって発達度合いは変化します。ひとりの人間には「強み」「弱み」があります。数字に強く書類作成は上手だが、対人関係が苦手でコミュニケーション下手であるという風にです。

 部下のスキルを分解して、「強み」「弱み」を把握できていれば、ひとりの部下のスキルの発達度合いを考慮して、スキル別に対応を変えていきます。

 例えば、数字や書類をまとめる「強み」に対しては『委任型』にして、お客さんとの折衝という「弱み」には『コーチ型』にして、話し合いをよくします。

 「俺のリーダーシップ・スタイルこうだ」と決めつけて、ひとつの型を全ての状況に当てはめるのではなく、状況にあわせて自身のリーダーシップ・スタイルを柔軟に変化させていくわけです。

 部下の状況に応じて接した方を変えていくと、ひとつ気になることがでてきます。例えば、こんなケースを考えてみます。

 部下が3人います。3人とも同期入社です。性格はバラバラで、仕事の発達度合も違います。入社して成長著しいA君には『援助型』で、まあまあのB君には『コーチ型』で、飲み込みが遅いC君には『指示型』とします。

 成長のスピードには個人差があります。当たり前の話ですね。すると、C君に不満が出てきます。

 「みんな同期なのに、なんで俺には仕事を任せてくれないんだ」と。

 部下本人の性格にもよりますが、リーダーの対応が異なると「平等じゃない」と不満を募らせ始める部下が出てきます。

 この課題に対して、SL理論は「平等じゃなくていい」と考えます。『1分間リーダーシップ』では、こんな言葉が紹介されています。


「平等でないものを平等に扱うことほど不平等なことはない」


 この言葉はもちろん、部下の不満などどうでもいいと言いたいわけではありません。部下の不満はモチベーション・ダウンにつながりますし、組織の雰囲気を悪くします。

 しかし、先の例で、C君に対して優秀なA君と同じのようなスタイルを適応したら、C君はより大きな失敗を犯して、社会人として生涯消すことのできない「心の傷」を負うかもしれません。また、他のメンバーから「C君に、あれは甘いよ」と、チームの雰囲気を悪くする、より大きな不満が生まれてくるかもしれません。

 「悪平等」という言葉がある通り、平等さに固執することは組織に害悪をもたらします。状況に応じてリーダーシップ・スタイルを変えることが、「公平」だと言えるのです。 

 部下ごとに対応を変えることは手段に過ぎません。リーダーにとって部下の成長、組織の成果が目的です。C君とA君へのスタイルが異なるのは、目的を達成するためです。目的を忘れず、時に厳しく事にあたるのがリーダーシップです。

 「平等ではなく、公平に」。

 SL理論を実践しようとする時の大切な心がけです。

 


参考文献:
『1分間リーダーシップ―能力とヤル気に即した4つの実践指導法』(K・ブランチャード他 ダイヤモンド社)
『入門から応用へ 行動科学の展開』(P・ハーシィ K・ブランチャード他 生産性出版)

(著者:松山 淳)

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